種まき工房

疲れたココロが、少しでも軽くなりますように。そんな「願いの種」を一粒ポロリ。

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バスは時間通りにやって来た。
車中から外をながめていると
見覚えのある場所にさしかかった。

「そうそう、ここだ」
バスは彼女の住むマンションの
前を走って行ったんだ。
昨年の記憶がよみがえる
あの坂、あの部屋、子どもたち…。

そして乗車すること約30分
病院に到着した。
病院自体は古いが
ヘリポートもある大きな病院だった。

後で彼女から聞いた話では
建ってからもう60年になるという。
彼女自身もここで生まれ
子どもたちもここで生んだそうだ。

私は、彼女の部屋へと足早に向かった。
6人部屋の入った左手
ベットの上に彼女は座っていた。
「あぁ、久しぶり〜」
元気そうという表現はふさわしくはないが
でも昨年と大きく変わりなくみえる
彼女をみてなんだかホッとした。

着いて間もなく
看護師さんが放射線治療だと伝えに来られた。
「連れて行ってくれる?」というので
「うん」と答え、車イスで放射線室に向かった。

もちろん車イスを
押したことなどほとんどない。
「慣れてないからゴメンやで」というと
「そんなことないよ、結構うまい」
と言ってくれた。

放射線を当て終え、部屋に戻ると
埼玉から親戚の方がみえられた。
3人で談話室へ行き
その方が持ってこられたお赤飯と
彼女の昼食をいっしょに頂きながら雑談。

実は前日に、彼女から
「パジャマを買って来て欲しい」
というメールが入った。
少しいいものが欲しいようだったので
梅田に行ってパジャマを探したのだが
これがなかなかの難題。

素材、色、カタチなどなど
悩みに悩み抜いて買ったけれど
どうだろうか…。
そのパジャマを差し出すと
気に入ってくれた様子だったので
本当によかった。

それから、どれほど話をしたかなぁ。
少し疲れてきた風だったので
その日は、もう帰ることにした。

つづく


Posted by 種まき at 00:46